『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅』
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「第11章 1戦犯裁判」つづき
シュトライヒャーの有罪判決とフリッチェの無罪判決の対比は、もっと奇妙である。
シュトライヒャーは、「ユダヤ人が東方で殺害されている時に、殺害や絶滅を扇動した」という理由で、絞首刑に処された。
フリッチェは、「ユダヤ人の迫害や絶滅を促すことはしなかった」ために、無罪とされた。
巧妙に合理化を広めたこの宣伝者は、戦争がユダヤ人によって引き起こされ、彼らの運命は「総統が予言したように辛いもの」に変わったと放送していたにもかかわらず、法廷は、彼がユダヤ人に何が起こっているのかを「知ら」なかったとみなした。
ここニュルンベルクにおいても、法廷は、大げさな宣伝を行う自由を保障していたのである。
これまで絶滅機構の中にいた人びとの運命について述べてきたが、多くの人を省略した。
以下に掲げるリストもごく一部にすぎない。
大半の加害者については報告がないのである。
スペインやアルゼンチンに逃げた者がいることは周知の事実である。
中近東に行った者もいる。一部は、イタリアの修道院に避難した。国内に隠れた者はもっと多い。
大半の者はまったく見逃された。
彼らは法律によっては生きてこなかった。そして彼らは、法律によっては死ななかったのである。
以下、20ページにわたって、数百名の名簿が記されている。
『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅』ラウル・ヒルバーグ
下巻304、318p 望田幸男他訳 柏書房 1997.11
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