『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅』
5


第11章 1戦犯裁判
被告人の選別は、侵略という訴因がはっきりと強調されていることを示しているが、彼らの大半は、ユダヤ人に対する行動に深く関与していた。
もはやこの行動を覆い隠すことはできなかった。
あまりにも多くの報告からあまりにも多くの写しがとられていた。
これらは、戦争の最終局面ではもはや始末できなかったのである。
今や、こうした秘密の報告文書が、判事に一つずつ提出された。……
絶滅機構の中で高い地位にあったにもかかわらず、被告人は無罪を主張した。
ユダヤ人の抹殺を知らなかったというのである。
フォン・シーラッハは何も知らなかった。
フンクも、カイテルも、ヨードルも、カルテンブルンナーも何も知らなかった。
彼らのうちの誰かが絶滅過程に関与したとしても、その関与は無実だというのである。
……しかし、すべての被告人が自身の行為の言い訳をした。
彼らは命令にしたがって行動したのであり、命令を出したのはアドルフ・ヒトラーだというのである。
……
とくに、被告人は単独に行動したのではなかったという。
彼らはただ選び出されたにすぎない。
フリッチェは、ゲッベルスの代役にすぎないと思っていた。
カルテンブルンナーは、親衛隊全国指導者の代理をしただけだと主張した。
彼は完全に無罪なのである(と主張した)。
有罪なのは、死亡したヒムラー、暗殺されたハイドリヒ、行方不明のミューラーであった。
実際、命令の系統はヒムラー=ミュラー=アイヒマンとなっていた。
カルテンブルンナーはユダヤ人とは何の関係もなかった(と主張した)。
フォン・シーラッハは、カルテンブルンナーの場合といくぶん似ていて、責任をもっぱら部下に押しつけようとした。
『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅』ラウル・ヒルバーグ
下巻302、303p 望田幸男他訳 柏書房 1997.11
コメントを送信