『黄色い部屋の謎』謎・改
黄色の部屋の翻訳史を、テーブルにまとめてみた。この一世紀で、なんと12種も翻訳がある。
長い古典としての生命力は、虚仮威しではない。
何故この部屋は黄色いのか。
何故この部屋に入ったとたん、彼は「黒衣婦人の香り」を嗅ぐのか。
謎は謎を呼び。
答えは、これら十二点にあるのかもしれない。ないのかもしれない。
① | 『怪奇小説 黄色の部屋』 | 1921 | 愛智博 | 金剛社 |
② | 『黄色の部屋』 『黄色い部屋の謎』 | 1953 1956 1959 1960 | 水谷準 | 日本出版共同 東京創元社 世界推理小説全集4 東京創元社 世界名作推理小説体系3 創元推理文庫 |
③ | 『黄色い部屋の秘密』 | 1956 1959 | 堀口大学 | 新潮社 新潮文庫 |
④ | 『黄色い部屋』 | 1956 1978 | 日影丈吉 | 早川HPB ハヤカワ文庫 |
⑤ | 『黄色い部屋の謎』 | 1961 1965 2008 新版 | 宮崎嶺雄 | 中央公論社 世界推理名作全集2 嶋中文庫 2005 創元推理文庫 |
⑥ | 『黄色い部屋の秘密』 | 1962 1973 1974 | 石川湧 | 東都書房 世界推理小説大系7 講談社 世界推理小説大系01 講談社文庫 |
⑦ | 『黄色い部屋の秘密』 | 1962 | 木村庄三郎 | 角川文庫 |
⑧ | 『黄色い部屋の秘密』 | 1977 | 榊原晃三 | 文研出版 * 他のジュヴナイル版は省略する |
⑨ | 『黄色い部屋の謎』 | 1979 | 吉田映子 | 旺文社文庫 |
⑩ | 『黄色い部屋の謎』 | 1998 | 長島良三 | 集英社文庫 |
⑪ | 『黄色い部屋の秘密』 | 2015 | 高野優 | ハヤカワ文庫 |
⑫ | 『黄色い部屋の謎』 | 2020 | 平岡敦 | 創元推理文庫 ジャン・コクトーの序文つき (これは、④の文庫版にもある) |
①は、ルレタビーユ・シリーズとして『古塔の幻』『ロシア陰謀団』『悪鬼の窟』『水中の密室』がつづいている。
③は、この訳者の晩年の仕事が、探偵小説翻訳へと転じていく転換点となった。堀口大学は次に、『男の首』を訳し、以降は、ルパン・シリーズが十点つづく。
新訳が相次ぐというのも、現代の新作の慢性的低迷によるところもあるが、ともかく、この作品自体の埋蔵容量を証明するのかもしれない。
⑫は、読みやすく・親しみやすい、という新訳のニーズに応える以上の抱負を示していないが、⑪は、もっと大胆な[意訳]をほどこしたとも主張している。監訳者あとがきに《原文とは違う情報が含まれたり、原文にはない情報が補足されている》(503p)とある。
その補足とはどこに?
気になるところだが、次回に。
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