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「センシニ」ロベルト・ボラーニョ

「センシニ」ロベルト・ボラーニョ

「センシニ」ロベルト・ボラーニョ

……僕は、センシニがブエノスアイレスで文学賞に応募することはできたのかと尋ねてみた。ミランダは僕を見て微笑んだ。さては、あなた、父と一緒に賞に応募してた人でしょう。父は賞であなたと知り合ったんでしょう。

……母は名前までつけてたんだから。名前って、誰に? 父とあなたによ、ガンマンと賞金稼ぎとか、もう覚えてないんだけど、首狩り族とか何とか。なぜだか分かる気がする、と僕は言った。

……結局どれくらいの賞をもらったのかな、と僕は尋ねた。十五くらいじゃないかしら、上の空で彼女は言った。それで、あなたは? 今のところはひとつだけ、と僕は言った。

……一度、マドリードの父のところにボルヘスが手紙をくれて、ある短篇のことをすごく褒めてたのよ、知ってたかしら、とコニャックのグラスを見つめながら彼女は言った。いや知らなかった、と僕は言った。コルタサルも父について書いていたし、ムヒカ=ライネスもよ。お父さんはすごくいい作家だったからね、と僕は言った。やめてよ、とミランダは言い、僕が何か気に障ることでも言ったかのように、立ち上がると庭に出ていった。僕は少し間を置いて、……

『通話』ロベルト・ボラーニョ
松本健二訳 2014.10 白水社 29p

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