ポケミスとシムノン
本日から、心をいれかえて、大論文をここに発信していきたい。四部構成。細目は以下である。
1 メグレとポケミス
2 シメノンからシムノンへ
3 純文学をポケミスに入れるな、と或るフランス文学者は怒った
4 こんな探偵小説を読んでみたい、と願った名編集者の想いは、読者にとどかず
今日は、第一回の「メグレとポケミス」
わが貧弱な書庫をさらえても、ポケミスのメグレは三冊きりしかなかった。
『メグレ罠を張る』『メグレと老婦人』は文庫版であった。
リストを調べてみると、他に『深夜の十字路』『霧の港』『或る男の首』あるだけだ。
これは、いかにも少ない。
世界一書きまくった巨匠のメグレ・シリーズの長編だけでも七十五作。約一割しか入っていない。
「ペリー・メイスン」シリーズとか、「007」シリーズとかは、ポケミスで揃っていたはずだ。と考えれば、この数字は不可解な少なさである。
『無愛想な刑事』は、メグレの部下では随一の弄くられ・キャラ、ロニョン刑事がタイトルを奪った連作短編。作者は、この男が出てくると、ついつい、一、二行で済むような人物点描を、さらに長く引っ張る手癖がある。『メグレと生死不明の男』では、アメリカのギャングスタにボコられて半死半生になるし、女房も登場すると、これが亭主に輪をかけたようなみすぼらしさ……。
他には『メグレとしっぽのない子豚』という稀覯本が存在する。しかしだが、これはポケミスではない。同じ判型であっても、天地・小口の色はイエローではなく、ブラウンの「ポケット・ブック」なのだ。通しナンバーも「800」台。
これも、不可解しごくなことである。
謎を追いかけていくと、この調子で疑問は次つぎと湧きおこってくる。
一度には片づかないから、以下は次号を待て。
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