ジョルジュ・アルノオ『恐怖の報酬』
ジョルジュ・アルノオの『恐怖の報酬』(一九五〇)を読む。
高名な映画の原作、という以上の感想が浮かんでこないので困る。極限状況のなかでの強烈なサスペンスは、やはり映像向きの趣向だったようだ。
この作者についての情報量はごく少ない。『ロマン・ノワール フランスのハードボイルド』にも、「この種のジャンルの古典」という位置づけがあるくらいで、具体的な言及は省略されている。翻訳はこの一冊きりだし、それもかなりの発見困難本の不遇ぶりだ。
小説は、主人公の命知らずのトラツク運転手四人を「熱帯浮浪人〈トロピカル・トランプ〉」と呼んでいる。映画化でいえば、駄作といわれたフリードキン版リメイクのディレクターズ・カットの前半を占めるパーツが、熱帯浮浪人の生態を描いた。その意味でいえば、アルノオはアメリカ西部劇スタイルを取り入れて、南米某所に君臨する石油資本の暴虐を題材化したのだ。
ハメットの『赤い収穫』が暴こうとした帝国主義の[中枢ー従属]構造に迫った。ーーもう少し頑張れば、と思った。
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