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『秘密口座番号 スイス銀行の秘められた世界』ニコラス・フェイス

『秘密口座番号 スイス銀行の秘められた世界』ニコラス・フェイス

『秘密口座番号 スイス銀行の秘められた世界』ニコラス・フェイス 1982 訳者解説 斎藤精一郎

ニコラス・フェイスは本書で、世界で初めて、この「スイス銀行のミステリー」に真正面から取り組み、この「神話」の幾重にも重なるヴェールを冷徹に剥がしてみせる。
「スイス銀行の神秘性」に執拗なまでに肉迫する取材力は、登場人物のディテールを極めた描写と重なって、まさに「空想科学小説」を読む醍醐味すら感じさせてくれる。
本書に登場する人物は、われわれがほとんど聞いたこともない者も多いが、その一方で、イランのパーレビ、アルゼンチンのペロン、ドミニカのトルヒーヨ、ニカラグアのソモサ、キューバのカストロやバティスタ、イラクのファイサル、インドのインディラ・ガンジー、ドイツのヒトラー、フランスのミッテラン、アメリカのケネディ、ニクソン、ルーズベルト、イギリスのチャーチルなど、現代の世界史を彩る独裁者や偉大な政治家の名が随所に登場してくる。


これだけではない。マフィアや国際金融を操る多様な人種の銀行家たち、さらに厚顔無比な国際的金融ブローカーたちが縦横無尽にスイスを舞台に闊歩する。
著者フェイスは、波乱に富むスイス銀行界の盛衰史を克明に追いながら、「スイス銀行の神秘性」がきわめてスイス的な風土のなかで培われてきたことを明らかにもしている。
この点は、本書の第二部「銀行秘密とナチス」において、鋭くかつ厳しい批判眼をもって、スイス銀行の裏面史として描出されている。そこで看過できないのはスイス人気質なのだ。

『秘密口座番号 スイス銀行の秘められた世界』ニコラス・フェイス 1982.12 NHK出版 484、485p

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