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『ヒトラーの秘密銀行』

『ヒトラーの秘密銀行』

『ヒトラーの秘密銀行』アダム・レボー

スイスの銀行、とりわけスイス国立銀行は、ナチスが占領国の国庫から没収した金塊のみならず、殺害されたユダヤ人たちから奪った金塊をも受け入れていた。
その方法は、即金で買い上げるか、またはナチスに代わって資金洗浄(ロンダリング)を行った後、他の中立国に送るかのいずれかだったことが、秘密扱いを解かれた機密文書から判明している。
スイスの銀行は、第三帝国に軍需物資の購入資金を外貨で提供した。
また、ナチスの経済官僚が略奪品をスイスの「セーフヘイブン(安全な避難場所)」に送るためのパイプ役を果たした。
さらに、ナチスやスペインやポルトガルに設立したダミー会社に資金を提供することによって、その国外諜報活動の資金面での後ろ盾にもなっていた。
また国際決済銀行(通称BIS、本店バーゼル)では、ヨーロッパの戦場で互いに戦火を交えているナチスと連合軍が、なんと大戦期間中を通して手を握っていたのだ。


 「スイスの銀行によるナチス政権への財政的援助がなかったら、第二次大戦は数年早く終息していたであろう」との説には、かなりの説得力がある。
……確かに、他の中立諸国のなかにも、第三帝国と経済関係を維持し、援助の手を差し伸べた国はあった。
スペインやポルトガルはタングステンの、トルコはクロムの、またスウェーデンは鋼鉄の供給者だった。
しかし、トルコはその後、ナチスとの外交関係を断ち、スウェーデンは四三年の秋、デンマークとともに、デンマークのユダヤ人数千を対象とした船舶による大規模な救出活動を展開し、全員を保護している。
ナチスの戦争遂行能力の維持に、スイスほど大きな貢献を果たした中立国はなかった
ナチスの軍需物資調達資金は、いったいどこから来たのだろうか。それはスイスの銀行である。
マドリード、リスボン、アンカラ、ストックホルムに、ライヒスマルク(一九二四ー四八年のドイツ通貨)を受け取るものなどいるはずもなかった。
また、リスボンやストックホルムに銀行はあっても、ポルトガルのエスクードやスウェーデンのクローナなどは、国際的に通用する貨幣ではなかった。
ナチスの取引相手は強いスイスフランを求めたのであり、それを提供したのがスイスの銀行だったのだ。

『ヒトラーの秘密銀行』アダム・レボー 1997
鈴木孝男訳 1998.5 KKベストセラーズ 12、13p

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