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『スイスの歴史』スイス高校現代史教科書

『スイスの歴史』スイス高校現代史教科書

『スイスの歴史』スイス高校現代史教科書 2006年

1996年と2001年の間に、独立専門家委員会[UEK、ベルジエ委員会]の枠内において、100人を超える歴史家たちが、ナチズム期のスイスの挙動を調査した。
この調査を触発したのは、特にアメリカ合衆国とユダヤ人組織とが、ナチスのユダヤ人迫害犠牲者の名において、スイスに対して行った大がかりな非難であった。この非難は、政治的・経済的・法律的圧力と結びついていたのである。
こうした対立のはじめには、スイスの諸銀行が、第二次世界大戦時のいわゆる所有者消息不明資産を、相変わらず保持しているという事実があった。
この財産の一部は、ナチスの犠牲者もしくはその相続人のものであり、それまで返還されていなかった。
まもなく、議論は、いろいろなテーマにも拡大された。


例えば、スイスの銀行は、戦争中に、ドイツが占領地域において略奪した金を購入していたのである。
さらに、スイスの銀行は、外国のユダヤ人たちがスイスにおいて安全に確保していると信じ込んでいた財産を、ナチスに譲り渡していたのだった。
スイスの武器輸出は、ドイツの戦時機構を支えていた。……
さらに、もうとっくに知られていることであるが、スイスは何千人という[第三帝国からの]難民たちを国境で追い返し、彼らの迫害者たちの手に渡していたのである。
所有者消息不明の銀行口座に関するあの対立によって始まった事態は、次のような包括的非難で終わった。
――スイスはナチスの独裁体制で得をしたのであるから、ドイツとの共同作業により、犯罪者たちの共犯者ということになる。

『スイスの歴史』スイス高校現代史教科書 スイス文学研究会訳 2010.2 明石書店 82p

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