真夜中の処刑人
アダム・ホックシールド『暗黒のアメリカ 第一次世界大戦と追い詰められる民主主義』2022 を読む。
AMERICAN MIDNIGHT
The Great War, a Violent Peace and Democracy’s Forgotten Crisis
by Adam Hochschild

『北米探偵小説論』(1998年版)第Ⅱ章「戦争は国家の健康法である」(95p-105p)では、一九一〇年代についての、きちんとした歴史的パースペクティヴをもった研究書に出会えなかったことが記されている。
参考
https://nozaki66.xsrv.jp/2024/03/17/3780/
『暗黒のアメリカ』は、その部分の執筆時に参考にできれば良かったと思わせる書物である。
1942年生まれのジャーナリストによる労作だ。事実の採集は壮大だ。いかに「偉大な」アメリカの伝統が反民主的な暴力によって形成されてきたかーー。
1917年から1920年代の前半にわたる数年間に集中した、この「支配体制」。アメリカの「民主主義」がいかに簡単に解体され、白人中心の排外主義、自国民への自警団的暴力行使にとって代わるかーー。
こうした書物がまとめられねばならなかった理由は明らかだ。最終ページに書かれるように、これはDTの「再選」をなんとしても阻止する、といった危機感の表明だった。
そして、再選は実現し、DTは王の座についた。
この本の記述によって、1917年のフランク・リトル虐殺事件の詳細を書いた「研究書」があることを知った。遺体写真は、初めて眼にするものだった。

ジェーン・リトル・ボトキン(1952-)には、他に、ウディ・ガスリーの伝記、
ウエスタン歌手マーティ・ロビンスの本、ウエスタン小説の解説書などがある。
「家族、図書館、博物館のコレクションから西部の直接的な資料を探し出し、新西部へと移行する歴史豊かな設定の中で、アメリカ人家族の個人的な物語と西部の女性、労働運動家、炭鉱労働者、保安官、無法者の感動的な物語を融合させています。」
フランク・リトルの曾孫にあたる作家だ。

『北米探偵小説論』(1998年版)第Ⅱ章「戦争は国家の健康法である」執筆時に、利用した一冊をあげておく。

目次は以下ーー
緒論 試練にたつアメリカ市民的自由――建国後の一世紀間における――
本論 第一次大戦と市民的自由
第二章 ウィルソン政権と市民的自由
第三章 自由の危機と革新主義者たち
第四章 良心的兵役拒否者と市民的自由
第五章 IWWとAFL
第六章 苦悩するドイツ系アメリカ人
第七章 黒人の市民的自由を求める闘い― NAACPとW・E・B・デュボイスを中心に―
後から見つけた資料。
『“ビッグ・ビル”・ヘイウッド 1889…1928 IWWとアメリカ労働運動の源流』 メルビン・ドボフスキー 久田俊夫訳 批評社 1989



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