×

ああ書いておけば良かった最新版

ああ書いておけば良かった最新版

 『ヒルビリー・エレジー』は、アメリカが「あんな大統領を選んでしまったこと」の深層を照らしだす映画だった。『ワイルドバンチ』でクレージーな銀行強盗を演じたボー・ホプキンスの爺さん役が光る。
https://atb66.blog.ss-blog.jp/2021-01-10
 相方の婆さん役のグレン・クローズが主役なんだが、この婆さんが『T-2』を100回観た、というシーンが出てくる。
 そのT-2シュワルツェネッガーが発信したスピーチが話題になっている。
 「史上最悪の大統領」といっただけでは不足する、アメリカ史の汚点をつくった「あの男」に二度目の弾劾訴追がなされている。日本国のコロナ禍対策じゃないけれど、遅きに失した政治選択だ。癒やしようのない「四年間」が歴史に刻印されてしまった。
 シュワルツェネッガーは、自分が育ったオーストリアの戦後の癒やしようのない精神荒廃(それを培養する家族関係)について、忌憚なく語っている。ファシズムに無言の同意を与えてしまった者らをとらえた贖罪と自責の、行き場のない感情……。それはナチス支配の「十二年間」の禍根が、その数倍も長く引きづられていくことを雄弁に示している。
 シュワルツェネッガーのスピーチで、もう一点、特筆すべきは、トランプ現象をはっきりとファシズムだと断定しているところだ。マスメディアは、この点、最初からポリティカル・コレクトネスの安全圏を確保して、ポピュリズムという無色の用語を使いまわすことによって、真の「言論責任」を放棄してきたのではないか。
 彼の政治作法、彼のふるまいのすべては、あの一九三〇年代に「ルイジアナのヒトラー」と呼ばれた男ヒューイ・ロングにそっくりだった。明白な事実にマスメディアは背を向け(みないふりをして)、彼を無害なポピュリストに仕立てあげようとした。シュワルツェネッガーの率直な発言は、その是々非々的な選択の言論責任をも問うているのではないか。
 三月六日は、トランプ・クーデターが失敗した「メモリアル・デー」として記憶されるべきだ。それを、トランプ現象の終焉の日にしなければならない。彼が期待した(かもしれない)白人至上主義暴力集団の潜在するパワーを抑止することは出来るのか。

コメントを送信