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ああ書いておけば良かった03 カリン・スローター

ああ書いておけば良かった03 カリン・スローター

 1048ページ下段
 「カリン・スローターのアトランタ警察小説シリーズ。」
 この一行は念稿の最終段階でねじこんだもの。内容について書く余裕があれば、3ページから5ページ増えた見当だ。残念度は低く、★★★。いつでも書けるさと思えるので。
 最初の作品『開かれた瞳孔』は読んでいたが、よくあるサイコ・サスペンスの新人という以上には注目しなかった。女性作家によるヒロインものへの期待も縮小していた。作者の転機と飛躍は、女性検死官サラを脇役に配して捜査官ウィルを中心に置いた新シリーズで明らかになる。ウィルは読み書き障碍(しばしば書類が読めない)とコミュニケーション障碍を背負った男。施設で育った呪わしい過去と顔や腕に残る残酷な傷跡。
 彼は「女たちのやさしさ」に囲まれなければ生きていけない男だ。施設で一緒に育った妻アンジーとの宿命的な絆、恋人サラとの困難な関係、相棒の女刑事フェイスとの連係、非情な上司アマンダに時折りいだく母親願望、彼を宥す飼い犬ベティ……。すべてそうだ。これは、女性作家によるヒーロー造型だからこうなる。男性作家では描けない。
 それと、スローターのシリーズでは、こうした常連人物たちのあいだに常に緊張がはらまれている。アマンダは、いつも部下に知らせるべき情報を隠しているし、生還率をかえりみない命令をくだすこともためらわない。主要人物同士の凄まじい葛藤によってストーリーが展開される醍醐味がある。シリーズ作品は一般的に、男性「ハードボイルド」作家RBPなどが好例となるわけだが、常連人物の無葛藤な和気あいあいを描いて読者をリラックスさせようとする(じっさいは作者が手抜きしている)傾向がある。だから続けて読むと飽きてくる。スローター作品は、その逆だ。
 なので、最新作『破滅のループ』について、シリーズの「大団円かな?」と書いたのだけれど、そうではないらしい。
 強烈な緊迫感を放つ展開
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61537720V10C20A7BE0P00/

 昨日の日本経済新聞夕刊に載った新刊紹介の記事から。取り上げた作品は、『破滅のループ』『神と罌粟』『発火点』。じつは、この三作に通底する共通テーマについて書きたかったのだが、長くなるので、また明日に。
 テーマとは、白人原理主義者による人種差別テローーホワイト・ライヴズ・マター。

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